スマートフォン型聞こえトレーニング「キクモア」による雑音下聴取能の改善効果

― 社内検証ホワイトペーパーの概要 ―

neumo株式会社 研究開発チームは、スマートフォン型聞こえトレーニング「キクモア」について、雑音の中で必要な音を聞き取る力にどのような変化が見られるかを社内で検証しました。

日常生活では、「静かな場所では聞こえるのに、家族の会話やテレビ、集まりの場では聞き取りにくい」と感じることがあります。こうした聞こえにくさには、音の大きさだけでなく、雑音の中から必要な音に注意を向け、聞き分ける力が関わっていると考えられます。

本検証では、日常生活で聞こえに不安や課題を感じる方に、約2か月間キクモアのトレーニングを行っていただき、トレーニング前後で「雑音下聴取能」を評価しました。その結果、雑音下で聞き取る力に改善の可能性が示されました。

※キクモアは医療機器ではありません。疾病の診断、治療、予防を目的とするものではなく、聞こえの測定とトレーニングを提供するサービスです。

本研究成果のポイント

  • 日常生活で聞こえに不安や課題を感じる方を対象に、スマートフォン型聞こえトレーニング「キクモア」の社内検証を実施しました。
  • トレーニングおよび前後の測定を完了した16名を解析したところ、雑音下聴取閾は平均+2.48 dBから−0.59 dBへ変化し、平均−3.07 dBの改善が見られました。
  • 16名中14名で改善が見られ、統計的にも有意な改善が認められました。
  • トレーニングで用いた音は言葉そのものではなく合成音であり、測定で用いた数字音声とは異なります。そのため、単に同じ課題に慣れたのではなく、雑音下で聞き取る力への汎化の可能性が考えられます。
  • 家族との会話、テレビやラジオの音量、集まりの場での聞き取りなど、日常生活での変化を感じた参加者もいました。

※本ページで示すdBは、背景雑音に対する目的音の相対的な大きさを表すSN比のdBです。耳鼻科や健康診断の純音聴力検査で用いられるdB HLとは意味が異なります。

要旨

キクモアは、聞こえに関わる脳の働きに着目したスマートフォン型の聞こえトレーニングです。今回の社内検証では、雑音の中で目的の音を聞き取る力である「雑音下聴取能」に対して、キクモアのトレーニングがどのような変化をもたらすかを、単群前後比較の方法で検証しました。

解析対象は、トレーニングとトレーニング前後の雑音下聴取能評価を完了した16名です。参加者は、1日30分を目安に、約2か月間キクモアのトレーニングを行いました。

評価には、背景に2人の話者の音声が流れる中で、別の声で読み上げられる3桁の数字を聞き取るテストを用いました。その結果、雑音下聴取閾は、トレーニング前の平均+2.48 dBから、トレーニング後の平均−0.59 dBへ改善しました。平均変化量は−3.07 dBで、16名中14名に改善が見られました。

この結果から、キクモアは、雑音の中で聞き取りにくさを感じる方に対して、聞き取る力を高めるための新しいセルフトレーニング手段となる可能性が示されました。

背景

聞こえにくさは、単に「小さな音が聞こえない」という問題だけではありません。音は聞こえているのに、言葉として聞き取りにくい、周囲に音があると相手の声がぼんやりしてしまう、といった困りごともあります。

たとえば、次のような場面です。

  • 家族との会話で、聞き返すことが増えた
  • テレビの音量を以前より大きくしないと聞き取りにくい
  • 複数人で話していると、誰が何を言っているのか分かりにくい
  • 集まりや会議で、周囲の音にまぎれて相手の声が聞き取りにくい
  • 声は聞こえるのに、言葉の内容がすっと入ってこない

このような「雑音の中で必要な音を聞き取る力」を、雑音下聴取能と呼びます。

キクモアは、こうした雑音下での聞き取りに着目し、聞こえに関わる脳の働きをトレーニングすることを目的として開発されました。

手法

被験者

本検証では、日常生活において聞こえに課題や不安を感じており、聞こえのトレーニングに参加したい方を募集しました。解析対象は、トレーニングおよびトレーニング前後の評価を完了した16名です。

解析対象者16名
年齢59〜88歳
性別女性13名、男性3名
実施期間2023年9月〜2024年12月
検証デザイン単群前後比較

実験手続き

本検証は、以下の流れで実施しました。

  1. 普段の聞こえの状況やトレーニングへの参加意思を確認
  2. トレーニング開始前に雑音下聴取能を測定
  3. スマートフォンアプリ「キクモア」で約2か月間トレーニング
  4. トレーニング完了後、開始前と同じ方法で雑音下聴取能を測定
  5. 日常生活での聞こえの変化について、インタビューやメール等で確認

評価方法

雑音下聴取能の評価には、neumoが開発した「digits-in-2-talker-babbleテスト(DI2TB)」を用いました。

DI2TBでは、2人の話者による音声が背景に流れる中で、別の声で読み上げられる3桁の数字を聞き取ります。参加者は、画面上の0〜9のボタンを押して回答します。

このテストでは、背景の雑音に対して、目的の数字音声がどの程度聞き取れるかを評価します。数値はSN比のdBで表され、値が小さいほど、より大きな雑音の中でも目的の音を聞き取れることを意味します。

トレーニング方法

キクモアのトレーニングは、スマートフォンから再生される音を聞きながら、タッチパネル上で操作を行うタスクです。

トレーニングで再生される音は、日常会話や数字音声ではなく、トレーニング用に設計された合成音です。参加者の成績に応じて難易度が変化し、一人ひとりに合わせた負荷で取り組めるように設計されています。

また、継続しやすいように、クイズなどの要素も取り入れています。聞こえのトレーニングは一度だけ行うものではなく、日々の積み重ねが重要です。

結果

トレーニングの実施状況

詳細な利用ログを確認できた参加者では、1週間あたりの平均利用日数は6.3日でした。多くの参加者が、ほぼ毎日トレーニングに取り組んでいました。

1日あたりのアプリ利用時間は平均46分で、そのうち聴覚トレーニングタスクを実施していた時間は平均13.8分でした。

雑音下聴取能の定量評価

トレーニング前後で、雑音下聴取閾は平均+2.48 dBから−0.59 dBへ変化しました。平均変化量は−3.07 dBで、16名中14名に改善が見られました。

この結果は、より大きな雑音の中でも目的の音を聞き取れるようになった可能性を示しています。

「−3.07 dB改善」の意味

今回の結果を理解するうえで重要なのは、ここで使っているdBが、一般的な聴力検査で使われるdB HLとは異なるという点です。

一般的な聴力検査のdB HLは、「静かな環境で、どれくらい小さな音まで聞こえるか」を表します。一方、本検証で用いたdBは、背景雑音に対して目的の音がどれくらいの大きさで聞こえるかを表すSN比のdBです。

SN比では、数dBの変化でも、雑音の中での聞き取りやすさに大きな違いが生じることがあります。そのため、今回の平均−3.07 dBという変化は、雑音下での聞き取りにおいて意味のある改善と考えられます。

日常生活での変化

定量的な測定に加えて、参加者には日常生活での聞こえの変化についても確認しました。参加者からは、次のような声が寄せられました。

  • 娘の声を何度も聞き返していたが、トレーニング後は聞き返しが大きく減った
  • 会話で聞き返す頻度が減ったように感じた
  • 集会での聞き取りが少し良くなった感じがした
  • 44%の人がテレビやスマートフォンの音量を下げても聞こえるように感じた
  • 1対1の会話で聞き返す回数が少なくなった気がした
  • 聞こえが良くなっていると実感でき、自信が持てて前向きな気分になれた
  • 夫との会話が以前より聞き取りやすくなり、ストレスが減った

※上記は参加者の主観的な感想をもとにした代表例です。感じ方や変化には個人差があり、すべての方に同じ結果を保証するものではありません。

考察

継続しやすいトレーニング設計

本検証では、約2か月間にわたり、スマートフォンアプリを使ったトレーニングを行いました。詳細なログを確認できた参加者では、1週間あたり平均6.3日利用されており、日常生活の中で継続的に取り組まれていました。

聞こえのトレーニングは、短期間に一度だけ行うものではありません。キクモアでは、難易度が一人ひとりに合わせて変化することや、クイズなどの要素を取り入れることで、続けやすい体験を目指しています。

主観的な変化には個人差がある

測定上は改善が見られても、日常生活での変化を大きく自覚しにくい方もいました。一方で、家族との会話、テレビやラジオの音量、集まりの場での聞き取りなどに変化を感じた方もいました。

聞こえの困りごとは、生活環境、会話相手、周囲の音、体調、集中状態などの影響を受けます。そのため、数値の変化と日常生活での実感は、必ずしも完全に一致するものではありません。

用語解説

雑音下聴取能

周囲に雑音がある中で、必要な音や言葉を聞き取る力のことです。日常生活では、家族の会話、テレビ、集まり、外出先などで関わります。

SN比

Signal-to-Noise Ratioの略で、目的の音と背景雑音の相対的な大きさを表します。SN比が小さいほど、より大きな雑音の中でも目的の音を聞き取れることを意味します。

dB HL

純音聴力検査で用いられるdBの単位です。静かな環境で、どれくらい小さな音まで聞こえるかを表します。本検証で用いたSN比のdBとは意味が異なります。

DI2TB

digits-in-2-talker-babbleテストの略です。2人の話者による背景音の中で、3桁の数字音声を聞き取ることで、雑音下聴取能を評価します。

単群前後比較

同じ参加者について、介入前と介入後の結果を比較する検証方法です。今回の検証では、キクモアのトレーニング前後で雑音下聴取能を比較しました。

隠れ難聴

一般的な聴力検査では大きな異常が見られにくい一方で、日常生活、特に雑音の中で聞き取りにくさを感じる状態を指す言葉として使われることがあります。気になる症状がある場合は、医療機関での確認をおすすめします。

研究開発チームより

今回の検証では、スマートフォン型聞こえトレーニング「キクモア」によって、雑音の中で聞き取る力が改善する可能性が示されました。

聞こえにくさは、日常の会話や外出、家族とのコミュニケーションに関わる大切なテーマです。キクモアは、聞こえに不安を感じ始めた方が、自分の聞こえを知り、日々の生活の中でトレーニングに取り組める選択肢を提供していきます。

詳しい内容はPDFに掲載

本ページは、neumo株式会社 研究開発チームによる社内検証ホワイトペーパー「スマートフォン型聴覚トレーニング『キクモア』による雑音下聴取能の改善効果 ―単群前後比較試験による検証―」の概要を、一般の方向けにわかりやすくまとめたものです。

本検証結果は、特定条件下で得られた社内検証結果であり、すべての方に同様の変化を保証するものではありません。キクモアは医療機器ではなく、疾病の診断・治療・予防を目的としたものではありません。